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様相の投影

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奥沢の家

東京都世田谷区の住宅地にある築50年のマンションの一室をフルリノベーションした。
夫婦と子供の3人で暮らすために取得したのは50㎡ほどの広さの部屋だ。3人で暮らすには広いとは言えない平米数であり、それぞれの活動のために必要な専用の部屋をつくる余裕はない。

ただ、ここは育児を行い、仕事をし、やすらぎ、語らい、様々な様相を受け入れる場となる。そこで出した解答は"様相”を重ねることのできる場をひとつつくるということだった。
多くの”活動”を兼ねるために部屋のつくり込みを避け、部屋全体をできるだけニュートラルな印象に留めた。その上で、照明などを効果的に使い、様々なシチュエーションに対応できるようなしつらいとした。

また、”兼ねる場をひとつつくる”ことに加えて、50㎡というスペースの中で3人が日々の暮らしをするためには、空間を最大限に有効活用し、少しでも広く感じられる工夫が必要であった。それらの課題を解決するために、次の工夫を行った。


1、廊下の突き当たりに設けた1枚鏡

まず空間を広く見せるため、廊下から掃き出し窓まで間仕切りや扉などは 設けず、L字に抜けるゾーニングとした。廊下→キッチン→ダイニング→リビング→縁側→バルコニー→風景というように 6層に及ぶ構成にし、空間の奥行き感を演出した。さらに廊下の突き当たりには、1枚の大きな鏡を設置することで、それらが反射し、その効果が増幅される。

2、景色を切り取る 

この部屋の一番の象徴となる掃き出し窓前の空間。
周辺地域が第一種低層住居専用地域のため、高い建物があまり存在しない、6階でもかなり眺望が抜け、景色が良い。その条件下のもと、掃き出し窓を額縁のように切り抜くことで、風景画を飾るように、外の景色を部屋に取り込む。意識的に外の景色に視線を導き、外の風景を取り入れることで、実際の部屋の広さよりも、遥かに広く感じさせることができる。

これらの工夫を取り入れることで、奥行きのある空間を実現し、
育児を行い、仕事をし、やすらぎ、語らうための ”兼ねる場” という住まいが実現した。


data

竣工
2023年9月
所在地
東京都世田谷区
構造
RC構造
階数
7階建6階部分
設計期間
2ヶ月
施工期間
3ヶ月
建築面積
49㎡

credit

企画・運営
loca design lab.
施工
miyagiya
写真
飯山 友太
担当者
飯山 友太